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学生メンバー|Students

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修士課程|Master Students

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味⽅ 唯|Yui AJIKATA

卒業論文では、大学の屋外空間を観察し、大学生の滞留行動や学びの行動が生じやすい空間特性を論じた。戦前から存在する4 つの大学を対象に、フィールドワークを通して大学生の居場所の設えを観察し、7つの空間像と「学び」の行為との関係性を明らかにした。都市計画領域には滞留行動を俯瞰的に把握する研究は多いが、行為と空間の質に迫る考現学的手法を取り入れたものである。鳥の目/虫の目を往還しコモンズとしての空間を描出する研究であった。​現在は庭園・公園に関する研究を構想中。

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飯塚 宙 | Sora IIZUKA

卒業論文では、「にぎわい」を標榜しつつも「座る・立つ・コーヒーを飲む」程度の行為しか想定されない日本の公共空間を批判し、ストリートバスケットという観点から真に「Vibrant」な都市はなにかを追求した。ここでは都市の屋外空間で展開されるストリート・バスケットに着目し、活動場所の全体像や、各々が場所を探索する過程を丁寧に調査し、最終的にストリート・バスケットがつくる界隈性や周辺地域への影響についても論じた。修士論文では、石垣島へ移住してきた人びとのオーラルヒストリー調査により、石垣島の「漂着性」と、漂流する人びとがもちうる「当事者性」を論じた。

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伊勢 佳那子 | Kanako ISE

卒業論文では、近年子育て世帯が流入している地域を対象に、子育てに適した環境と子育てへの不寛容性をめぐる出来事を採集する研究を行った。ここでは近年大規模な建て替えが行われた住宅地を対象に、旧来からの団地に住む住民と新たなマンションに住む住民の子育てへの寛容性を比較検討し、結果としてその地域での「子育ての履歴」が寛容性に影響していることを明らかにした。2022年度にはゼミリーダーを務めた。修士論文では、LGBTQの人びとが主人公となっている映画を分析し、それぞれの映画を場面に区切り、「自制」と「開放」のシーンの連続としてとらえた。また、それらの背景にある規範や空間・人間関係を論じた。

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沢藤 嶺|Rei SAWAFUJI

​卒業論文では、東日本大震災から10年間にわたるオーラルヒストリーを聴きながら、そのなかで位置づけ不明な「些細な断片の記憶」が数多く語られることに注目。それらのエピソードを丁寧に採集しつつ、それらが彼らにとってどのような意味をもつのかを考察し、震災は10年を経てなお「一貫したストーリー」として語ることはできず、断片的で宙づりなエピソードは「震災という出来事とひとりひとりの生の間」を止揚する役割があるのではないかと論じた。修士論文では、岐阜県の各地で行われている「地歌舞伎」に着目し、地歌舞伎の保存会の人びとと役者へのオーラルヒストリー調査を通じて、地歌舞伎の「形式」と、形式から発生する「内容」の相互関係について論じた。

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大和 英理加 |Erika YAMATO

卒業論文では、都市の公共空間から滞留者を排除する「ディフェンシブ・アーキテクチャ(DA)」を可視化するワークショップを考案・実施。さらに、それらがある人に発見されても別の人にとっては認知されにくいことに着目し、「共有可能性」を調査することで、なぜこれらのDAが不可視化されているのかを明らかにした。さらに、DAが組み合わされて構築される環境を「ディフェンシブ・エンバイロメント」と呼び考察した。修士論文では引き続きDAの研究を行い、Park-PFIで整備された公園を対象に、「自治体/介入性」「民間企業/功利性」「利用者/自在性」の観点から、公園のコモニングを論じた。

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山室 颯也 | Soya YAMAMURO

​卒業論文では、インターネットで募集され個人で参加するフットサル「個サル」を調査。個サルの行われる場所の全体像や、参加者の属性や参加の経緯を丹念な参与観察によって明らかにした。個サルでは個人については踏み込まず、フットサルを共同で行って解散する。この「集まり参じる」新しい人間関係が、「蓄積によらない社会関係資本」としての可能性をもつと論じた。修士論文では、1960-70年代に文化運動が起こった南佐渡をフィールドに、民俗学者・宮本常一が提唱した「日本海大学構想」が現在の「鼓童」に受け継がれていく様子を歴史研究的に明らかにした。

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池上 恵美|Emi IKEGAMI

卒業論文では、アイドルや有名人のファンたちが自主的に資金を募り都市の屋外空間に掲出する「応援広告(センイル広告)」を調査。応援広告の全体像をSNSの悉皆調査から把握したのち、掲出に至るまでどのようなやりとりや工夫があるのかを丹念に分析。論文の最後には、「応援広告を装った企業広告」がすでに出現していることにも触れ、応援広告が広告の役割を変えることができるかを展望した。

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伊藤 真優 | Mahiro ITO

卒業論文では、北海道の「低密持続地域」をめぐりながら、低密度で昼夜間人口比の高い地域を考察。それらの地域が厳しい自然環境や立地に晒されながらも、「コンヴィヴィアルな」生活を営んでいる様子を調査した。研究では地域を自然環境から亜自然、人口環境までを含めた巨大な断面で捉える「ヴァレー・セクション」の手法を取り入れた。2022年の早稲田大学優秀卒業論文賞を受賞。

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糸賀 大介 | Daisuke ITOGA

卒業論文では、ウクライナの状況を受けて「行ったことのない場所、当事者ではないものに対して、人はそれらを自分ごとと捉えることはできるか」を研究。「わたしごと」というキーワードをつくり、「場所」での経験が「わたしごと化」を促すとしたら、それはどのようなものかをワークショップを通じて明らかにした。論文の後半では、「わたしごと化」が持続しうるか、何に結実するのかを調査し、場所の本質的な意義にまで迫った。

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隅田 開|Kai SUMIDA

​卒業論文では、COVID-19流行下の約3年間で撮影された写真に注目。しかも撮影された写真のアーカイヴと、撮影者が覚えている出来事のオーラルヒストリー調査を比較することで、「記憶に残っていないが記録されている」風景たちを抽出した。これにより、コロナ禍で発見された些細だが重要な場所を明らかにし、これらを「第四の場所」として理論化した。

学部四年生|Undergraduate Students

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上原 祐輝|Yuki UEHARA

卒業論文では、学芸大学前駅周辺の高架下で実施されている「みんなでつくる学大高架下プロジェクト」に注目し、都市計画やまちづくりを専門としない地元のクリエイターたちがプロジェクトに参画している様子を論じた。研究では、彼らを「ローカリスト」と呼称し、専門家でも、従来のまちづくりが「住民参加」で想定している地元住民でもない、第3の主体として位置づけた。

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白鳥 雄星 | Yusei SHIRATORI

卒業論文では、八戸市に根付いている「早朝文化」に着目し、早朝文化の中心である3つの朝市のフィールドワークとヒアリングにより、朝市に通っている人びとが他にどこで何をしているのかという全体像を明らかにした。また、早朝2時から9時までの朝市の人の出入りを丹念に調査し、「1次的担い手」「2次的担い手」「3次的担い手」が入れ替わっている様子を描写した。

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鶴井 唯人 | Yuito TSURUI

卒業論文では、草津の22の外湯を対象に、その周りの「湯周り空間」での人びとの滞留行為を論じた。調査は5日間、朝・昼・夜の滞留実態を記録し、330枚の実態記録地図を重ね合わせ、1辺2mのグリッド(方眼地図)で解析して滞留空間を4種類のクラスタに類型化した。こうした人びとの動きを解析する手法を、「動態考現学」と呼称した。

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西村 味佳|Mika NISHIMURA

​卒業論文では、席数が少なく空間としては極小だが、グローバルな視野を持っており都市に対しても影響力をもっている「コーヒーキオスク」を研究した。オーナーとバリスタへのヒアリング、空間の実態調査を踏まえて、コーヒーキオスクが形成されている背景を探り、バリスタたちが日常的に構築しているネットワーク、農園との関係や地域コミュニティでの役割などについて論じた。

卒業生|Alums

2022

神作 希|Nozomi KAMISAKU

卒業論文では、渋谷のストリート文化に着目し、グラフィティの活動変容をそれが行われる空間と対応させて調査した。他方、アーティストたちへのヒアリングから、彼らが「アーティスト」としての顔と「ライター」としての顔を戦術的に使いこなす様子を明らかにした(景観ゼミ)。修士論文では、ジェイン・ジェイコブズの提唱した4つの「都市的多様性を生成する条件」をもとに東京の都市環境を評価し、それらが高い水準で実現している地域の歴史的経緯を明らかにすることで、「ジェイコブズ都市」が実現しうる条件を論じた。

河井 優|Yu KAWAI

卒業論文では、住宅の購入を検討している者と地域住民が意見交流を行う、マンション購入の匿名掲示板を調査し、彼らの関心がどこに向けられているのかを明らかにした。さらに「世帯年収」と「子育て」というふたつの論点について、それらの議論の背後にある偏見や思考様式を論じた。この論文は、日本建築学会・優秀卒業論文賞を受賞した。修士論文では、首都圏に住む30代の男女600名へのアンケートをもとに、青春時代の都市体験と、現在の都市環境の志向性とを比較。住環境の志向性が「再生産」されるか、「逸脱」するかを検討し、その条件を論じた。

篠原 和樹|Kazuki SHINOHARA

卒業論文では、パンデミック下の郊外住宅地を調査し、自身の近隣で生活を充足しなければならない人びとが見出した路上の活動空間を「近隣公共域」と名付け、それらが行われている10の空間類型を導いた。そしてこれらの小さな空間を埋め込んでいくことが、ウィズ/ポストコロナの郊外のライフスタイルを再価値化する方策だと論じた。この論文は、日本建築学会・優秀卒業論文賞を受賞した。修士論文では、盛り場を人びとの集まる動態そのものととらえ、人びとがやってくる範囲と、時間帯による変化とを分析することで盛り場を類型化し、さらに類型ごとのケーススタディによって人びとの滞留の場の特性を論じた。

高橋 亮太|Ryota TAKAHASHI

卒業論文では、新型コロナウィルス流行に伴い、家族の複数人がテレワークをすることによって住空間がどう変化していくかを、膨大な図とデータによって可視化した。そして、住宅が「村化」と「都市化」のふたつの方向へ変化していく様子を多角的に描き出した。修士論文では、大規模都営住宅26団地を対象としたフィールドワークによって、居住者の手によって構築された空間を類型化。「菜園」「寄合所」「物置」「露店」「獣道」「付加物」「装飾」などの9要素を整理し、それらの設置・利用方法から集合住宅の共同性を論じた。

田村 祐太郎|Yutaro TAMURA

卒業論文では、インターネットに掲載された個人の旅行記を分析し、そこに登場する場面のシークエンスを丹念に読み解くことで、経験のシークエンスを「主題景」「細部景」「転換景」「破調景」に分け、それらを構成する風景要素や旅のなかにおける演出的役割を論じた。2021年度にはゼミリーダーを担当。修士論文では、都市の経済の一定部分を占めている「アルバイト」について、求人側のテーマ変遷と、アルバイト従事者が求めているものとの相互関係の運動を「アルバイト都市」と定義し、両方向からの調査によってその全体像を描き出した。

高柳 綾香 | Ayaka TAKAYANAGI

2023年3 月に学部を卒業。卒業論文では、情報空間と物理空間にまたがる人間関係に着目。とくに、情報空間でアーカイヴされていく人間関係が、忘れられたのちに再び参照され活用されるような事象を「潜在的つながり」と呼んだ。研究ではさまざまなアプリケーションを比較しつつ、情報空間上で「潜在的つながり」が立体的に組みあがっている様子を描出した。「自分が忘れても関係は残っている」というテーマは、都市計画分野に留まらない先駆性をもつものである。

横山 魁度|Kaito YOKOYAMA

2023年3 月に学部を卒業。卒業論文では、早稲田大学の「卒業計画」のインフォーマルな活動場所を「野生のアトリエ」と呼んで調査。早稲田大学では卒業計画は3人1組で行われ、COVID-19流行下では大学の作業場が閉鎖されたため、街中で活動場所を各々用意する必要が強まった。研究ではそれらを「Place Sensing」「Place Making」「Place Networking」の3つの観点から調査・分析した。

2021

泉川 時|Toki IZUMIKAWA

2022年3 月に修士課程修了。卒業論文では、再開発が進行する都市部の神社の形態変容を、東京都内の神社空間の全数調査と神主へのヒアリングによって明らかにした。神社のモルフォロジーに関する膨大な調査もさることながら、近代都市の中で神社=前近代的なものがどのように生き残っていくかという、「オーセンティシティ」や「再帰的近代」の議論にかかわる高度な議論を展開し、「リミナルな空間」にはたらく諸力を論じる研究であった。​修士論文では地域の「なりわい」の継承を調査し、継承者が主体的に継承していくのではなく、主体の所在がわからないような「中動相的」な関係がはたらいていることを論じた。

須栗 諒 | Ryo SUGURI

2022年3 月に修士課程修了。2021年度に空間言論ゼミへ転入。修士論文では、日本のシェアハウスがもつ様々な「共住の表象」を論じる研究に取り組んだ。その結果、シェアハウスに求められる志向性が「人/場所」「変化/安定」という2軸、4象限によって整理できることを明らかにし、都市において「あえて家族ではない共同関係で住むこと(=再帰的共住)」の意味に迫った。

原 望峰|Nozomi HARA

2022年3 月に修士課程修了。卒業論文では、メディアで取り沙汰される「ひとり向けサービス」や「ひとり行動」を調査し、アンケート調査などを通してその意義を考察した。孤独死や孤立が問題視され、人びとをいかにして「みんな」に包摂するかが注目されるなかで、それとは真逆に「過剰接続社会」に疑問を呈し、「ひとりでいる時間」がなぜ、どのように求められているかを論じるものであった。2020 年度のゼミリーダーを担当。

​修士論文では神奈川県藤野町に着目し、神奈川県による「芸術家村構想」を覆し、芸術家たち自らがつくりあげた「観光化によらない地域計画」を論じた。

吉野 良祐|Ryosuke YOSHINO

卒業論文では、老後生活の格差化と死生観に関心を持ち、「開放型サービス付き高齢者向け住宅」に着目。事業者へのヒアリング、空間調査、居住者へのアンケート調査などを複合的に用い、高齢化社会にあらわれつつあるコミュニティのすがたを描いた。開放型サ高住という対象を発見したこと自体、都市計画学にとって価値のあることだったが、「教化」「社会化」などのコミュニティの在り方を論じたことも示唆的であった。修士課程にあたって、ゼミを転向。

2019

津島 英征 | Hideyuki TSUSHIMA

2020年3 月に修士課程修了。卒業論文では、東京都で行われてきた77の再開発事業を分析し、都市空間の更新に関する言説や目標像の変遷を論じた。のちに査読付き学術誌にも掲載され、言説分析に基づく「都市計画の社会史」とも呼べる新しい研究領域を拓いた。修士論文では一転し、奈良県橿原市をフィールドに新規参入者とコミュニティの再帰性に関する研究・実践を行い、「まちなじみ」という概念を提唱することで、社会関係資本論の「出来事論的転回」をねらった。

松永 幹生 | Mikio MATSUNAGA

2020年3 月に修士課程修了。卒業論文では、高田馬場での早稲田大学生の「慣習的空間利用」を観察することで、大学生たちが大学街にもつ独特な「場所の感覚」と、それらがいかに伝承されていくかを明らかにした。成果は査読付き学術誌に掲載され、本書「パフォーマティヴ場所論」の理論的支柱を準備した。修士論文ではレジャーと自然の消費に関心を持ち、新たに流行しているグランピングを網羅的に調査することで、それがどのような公共的効果をもちうるかを考察した。

田嶋 玲奈 | Reina TAJIMA

2020年3 月に修士課程修了。卒業論文では、都市計画領域の郊外研究で長らく注目されてこなかった千葉ニュータウンを対象に、開発当事者の語りと実際の空間変化を対置して、ニュータウン形成の社会史的記述を試みた(査読誌掲載済)。2018 年度にはゼミリーダーを担当。修士論文では、開発当時から時間が経過し、自治体にとって負の遺産となりつつある再開発ビルを対象に、その網羅的調査によって「再再開発」の方向性を模索してシナリオを示す、挑戦的な研究に取り組んだ。

廣瀬 耀也 | Yoya HIROSE

2020年3 月に修士課程修了。卒業論文では、特徴的な若者集団である「マイルドヤンキー」に対する綿密なヒアリングを通して、都市計画研究が対象としてきた牧歌的な地元愛と対照的な、「不道徳な地元愛」の形成過程を明らかにした。のちに査読付き学術誌にも掲載され、エスノメソドロジーを取り入れた自由口述分析の端緒を拓いた。修士論文では1000 件以上に及ぶオフ会の調査から、多数派と少数派を分かつ様々な障壁とそれを乗り越える「再帰的共同」について論じた。

2020

金子 柚那|Yuzuna KANEKO

2021年3 月に修士課程修了。卒業論文では、就労・居住の流動化や再編を試みる「ワーク・ライフデザイン」実践者に着目し、彼らのライフヒストリーや空間利用実態を調査した。新たなライフスタイルを模索する人びとを「ワーク・ライフデザイナー」と称した同論文は査読付き学術誌にも掲載され、ワーク・ライフバランスの次の就労・居住環境の展望が開かれた。2019 年度には ゼミリーダーを担当し、後輩たちの卒業論文指導にあたった。修士論文では卒業論文のテーマを延長し、流動的な人材と既存企業をマッチングする「ジョブ型雇用」を網羅的に調査し、そのなかで地方圏のジョブ型雇用を普及させるための方策について論じた。

​松浦 遥|Haruka MATSUURA

2021年3 月に修士課程修了卒業論文では、趣味や副業活動の舞台となっている東京圏のレンタルスペースをはじめて網羅的に調査し、オーナーへのヒアリングを通してその社会的な役割を論じた。石綿論文から続く「経験の地理」の手法を引き継ぎながらも、新たに台頭している都市空間の「リミナルな」占有方法であるレンタルスペースの意義を打ち出した。成果は査読付き学術誌に掲載され、事実上日本初のレンタルスペースを扱う建築・都市領域の論文となっている。修士論文では、地方移住者が編集するリトルプレスが、地域社会空間を編纂していく可能性を論じた。

​小山 真由|Mayu KOYAMA

2021年3 月に修士課程修了。卒業論文では、火山灰が日常的に降り注ぐ桜島をフィールドにして、居住者が行っている工夫とその空間的発露を、ヒアリング・アンケート・フィールドサーヴェイを組み合わせた方法によって多角的に論じた。観察と聞き書きの膨大な作業によって、空間言論ゼミではこれまで行われてこなかった「デザイン・サーヴェイ」による建築空間調査と、人びとのふるまいや暗黙知とを結び付ける領域を拓いた。修士論文では、車中泊を行う人々への取材と車の使い方の考現学調査を行い、定住と流動をゆれうごく「遊動的な生」を空間、時間、思想という3つの切り口から論じた。

北條 光彩季|Misaki HOJO

2021年3 月に修士課程修了卒業論文では秋葉原の路上空間で展開される「趣味交換市場」の調査を行った(査読掲載済)。この調査は物理的な空間での人びとの位置取りや間合いの取り方だけでなく、来街者たちの目的や心理にまで迫るもので、「事前目的を達成する行動」によって形成される趣味交換市場だけでなく、「場当たり的な行動」によって形成されるそれを可視化することができた。修士論文では東京の主要な繁華街を回り、新型コロナウィルスのパンデミック下での繁華街の変貌を調査した。これらは「盛り場の反転」としてまとめられた。

2018

石綿 朋葉|Tomoha ISHIWATA

2019 年3 月に卒業。卒業論文では、東京の飲食環境の多様性を「食の経験」の豊かさに着目して可視化し、その空間特性や地域による差異を論じた。機能ではなく「経験」がつくる繁華街の多様性を扱った同論文は、査読付き学術誌にも掲載された。2017 年度にはゼミリーダーを担当した。修士論文では引き続き食の経験の可視化技術開発に取り組み、新宿をフィールドにして既存の物理的環境と「食の経験の圏域」との相互関係を論じた。

李蔚|Lee WEI

2019 年3 月に修士課程修了。修士論文では、外国人居住者が増えつつある高島平団地をフィールドに、3つのコミュニティ・カフェで参与観察調査を行い、多国籍コミュニティのハブとなる役割を考察した。老朽化し居住者が少なくなった団地が外国人の流入の新たな受け皿となりつつあるなかで、外国人居住者自身が団地運営に関わり、転居後も通い詰めて広い範囲で社会関係を継続し続けている好例を、現場からの緻密なレポートによって明らかにした。

澤田郁実|Ikumi SAWADA

2018 年度に在籍し、卒業論文を書き上げたのちに建築計画の古谷・藤井研究室に転入。卒業論文では、東京旧15 区の「まちかど」を評価することばを抽出するワークショップ手法を開発し、まちかどの分布特性やしつらえなどを分析した。物理的な「角地」と何らかの魅力がある「まちかど」とを区別し、地域のなかに萃点のような「まちかど」が発生する条件を探るもので、まちの「ツボ」を科学的手法によって評価する研究であった。

鷹野 泰地 | Taichi TAKANO

2019 年3 月に修士課程修了。卒業論文では、新宿・渋谷・池袋といった繁華街のストリートパフォーマンスを綿密に調査し、路上空間の公共性と寛容性について論じた。修士論文では、綿密なヒアリング調査から一転し、科研費データベースをもとに研究者ネットワークの分析を行う高度な解析技術を開発した。これにより、人的資源のネットワークがつくる国土の構造や、周縁部に生まれる研究自立性の高い地域のあり方などを論じ、新たな研究領域を開拓した。

2017

竹田 顕哉 | Kenya TAKEDA

2018 年3 月に修士課程修了。卒業論文では、外国人観光客が急増する谷中銀座商店街における訪問客の滞留行動や空間特性を、観光客の行動観察を通じて論じた。修士論文では、インタビューと同行調査を通して外国人留学生の居住地選択と生活実態、それらを支える仕組みなどに迫った。都市における外国人の行動に迫る研究を一貫して行ってきたが、そのテーマは観光から居住、さらには彼らが直面する困難へと移っている。

平澤 道郎|Michio HIRASAWA

2018 年3 月に卒業。卒業論文では、シェアハウスに住む若年単身者と民間事業者に着眼し、社会的に安定していない人びとの共住のあり方を論じた。2016 年度には初代ゼミリーダーを務めた。修士論文では、首都圏のNPOを俯瞰的に把握することで、多様な「文化運動」が生じる都市環境を論じた。2300 法人の活動目的を自己組織化マップによって可視化する圧巻の方法論によって、「社会的再帰性」と「場所」の関係をマクロな視点から読み解く研究であった。

上井 萌衣 | Moe JOI

2018 年3 月に修士課程修了。卒業論文では、東京下町地域の住民間で行われる下町像の伝承行為の実態や世代間差異を論じた(査読誌掲載済)。ヒアリングから得られた「語り」をマトリックスによって可視化する手法は、のちに空間言論ゼミのオハコとなった。修士論文では雑誌記事の分析からリノベーション・ブームを多角的に論じ、対象となってきた建物の特徴や、付加される価値の類型、さらにヒアリングを通して事業者の参入動機などを明らかにした。

2016

小林 桃莉 | Tori KOBAYASHI 

2017 年3 月に卒業。卒業論文では、カーシェアリングが併設されたマンションを調査し、その導入過程や利用上の課題などを明らかにした。都心部での自動車利用が低調になるなかで、共助のインフラストラクチャーとしてマンション単位で共有される自動車があらわれたことに着目し、生活と密着した新たな交通の可能性を論じている。結論部では、カーシェアリングの「個別特化」、「ハイクオリティ化」、「低コスト&自由化」という三つの方針を示している。

蔵田 夏美 | Natsumi KURATA

2017 年3 月に修士課程修了。修士論文では、趣味でものをつくり販売する人びとのつくる新しいコミュニティを取り上げ、「趣味市場」の実態を論じた。デザインフェスタのような大規模イベントに出向き、そこで集まっている人びとから普段の活動の様子を聞くことで、イベントを核として構成される無数の空間からなる「場所のシステム」を炙り出す手法を確立した。同論文は査読付き学術誌にも掲載された。

2015

福田 雄太 | Yuta HUKUDA

2016 年3 月に卒業。卒業論文では、首都高速道路の言説変遷をテキストマイニング法によって定量的に明らかにする分析手法を提示した。タイトル「巨大建造物が都市に定着する過程における社会評価の変遷」が示すように、都市的なスケールの事象が人びとに受け入れられるまでの過程を正面から扱った論文で、都市史をフーコーのいう「声と耳」の原理のような、新しい角度から扱う研究分野の端緒を拓いた。

加藤 瞭|Ryo KATO

2016 年3 月に修士課程修了。修士論文では、屋外広告物条例では取り締まれないグレーな「準屋外広告物」に着眼し、その設置特性や景観的特性を論じた。卒業論文から引き続き銀座をフィールドとした研究であったが、ここでは街路の連続立面の分析からはじまり、最終的には「都市のファサードがもつべき情報容量」にまで議論は展開した。同論文は査読付き学術誌にも掲載され、空間言論ゼミ初の査読付き論文(建築学会)となった。

斎藤 千紗|Chisa SAITO

2016 年3 月に修士課程修了。修士論文では郊外生活の持続可能性をテーマに、横浜市郊外部でなお人口が増加傾向の地域を抽出し、居住地選択を論じた。卒業論文から引き続き、条件が不利な地域にそれでもなお移り住む若年層を対象にした研究で、ここではコンジョイント分析など当該分野ではあまり行われてこなかった分析手法に挑戦している。本稿は最終的に、「沿線沿いに発生する地縁的居住地選択」という行動原理にまで行きついている。

池尾 恵里|Eri IKEO

2016 年3 月に修士課程修了。卒業論文から高齢者の生活圏に関心を持ち、修士論文では外出促進要因を分析。環境が似ており地理的に隣接するにもかかわらず高齢者の外出率が大幅に異なる地域を割り出し、居住者への丹念なヒアリングによって生活実態と居住歴を把握した。これにより、「居住圏と行動圏の変動領域」というバッファゾーンを発見し、この範囲を左右する環境要因を論じていった。

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